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Posted by TI-DA at

2023年03月22日


2023年03月20日

『境域の近世 慶長戦役後の琉球と薩摩』





 上原兼善(岡山大学名誉教授)著

 一六〇九年(慶長一四年)島津氏は三千の兵を琉球に送り、首里城をおとしいれ、国王尚寧を捕虜として薩摩につれ去った。以後、「琉球処分」に至るまで琉球は事実上島津家の支配におかれることとなり、このことは今日に至るまでいわゆる「沖縄問題」の根源として多くの人々の記憶の中に生きている。
 著者は二〇〇九年に『島津氏の琉球侵略』を上梓し、琉球と薩摩がどの様にして慶長の役に至ったのかを明らかにし、好評を得た。
 本書は、慶長の役の後、薩摩支配下の琉球と薩摩との関係史を掘り起し、いわゆる両属体制下にあって琉球側がいかにしてその主体性を維持する為に苦心し、王国としての存立を希求してきたのかを明らかにする。
 慶長戦役後、国王尚寧は島津氏に引き立てられた上で徳川将軍と会見したが、これを契機として機会あるごとにいわゆる「江戸立ち」をすることになるが、この「江戸立ち」はその都度、薩摩藩の内情、琉球王府の内情、そして幕府の政治状況が複雑にからみあう、かけひきの場でもあった。それは日本薩摩―琉球の関係のみならず東アジアの政治情況とも連動するものであった。
 本書では、それらの動きと関係史料を再吟味した上で新たな史料を読み解き、琉球―薩摩の関係史に新たな光を与えるものである。
 前著『島津氏の琉球侵略』のいわば続編であると共に、「琉球処分」の前史でもある。

   A5判、並製、232頁
   定価2,970円(本体3,600円+税)


〈目次〉

はじめに
一 琉球使節の成立
二 東アジア世界の変動の中で
三 羽地朝秀の財政改革
四 「唐之首尾御使者」
五 宝永七年の琉球使節
六 正徳期の書翰問題
七 隠蔽と開示の狭間で
八 島津重豪と琉球使節
九 「琉球仮屋」から「琉球館」へ
一〇 輻輳する使者派遣儀礼
一一 窮迫する島津財政
一二 中城王子の御目見問題
一三 実現されない使者参府
一四 使者派遣制の変革
一五 「琉球処分」前夜の鹿児島藩(県)の動向
終章 琉球館の終焉
 参考文献・史料

*著者紹介*

上原兼善
 一九四四年、沖縄に生る。九州大学文学研究科博士課程中退、岡山大学名誉教授。研究の功績に対し第37回東恩納寛惇賞授賞。
 著書に『鎖国と藩貿易』(一九八一)、『幕藩体制形成期の琉球支配』(二〇〇一)、『島津氏の琉球侵略』(二〇〇九)、『近世琉球貿易史の研究』(二〇一七、徳川賞/角川源義賞/日経・経済図書文化賞)
  

Posted by 沖縄本といえば榕樹書林 at 20:41Comments(0)歴史

2023年03月20日

只今発売中!『琉球浄瑠璃 久志の若按司』




 松山傳十郎著/茂木仁史解題

 琉球王国は一八七九年(明治一二年)、明治政府による廃藩置県によって滅亡させられた。いわゆる「琉球処分」であった。明治政府の軍事力をバックに沖縄には多くの寄留商人や得体の知れない文士らが来琉し、琉球の日本化を推し進めた。しかしその中で琉球の歴史や文化を尊重し、これを紹介したり研究したりする人もいないではなかった。
松山傳十郎もその一人といえよう。松山のことはよくわかっていない。沖縄で新聞記者をしたり雑誌に記事を書いていたらしいが、彼の名を琉球・沖縄史にとどめているのは一冊の本の刊行である。その一冊こそ今回復刻出版することとなった
琉球浄瑠璃 内題・久志の若按司(明治二二年、いろは家)
である。B6判九二頁の小さな本である。この本は琉球に「組踊」と呼ばれる完成度の高い古典芸能があることを全国に知らしめることとなった。松山傳十郎が何故に『琉球浄瑠璃』というタイトルとしたかは定かではない。浄瑠璃に似ているとでも思ったのであろうか。
 組踊は元々は一七一九年に琉球国王尚敬の冊封の為に来琉した冊封使一行(正使海宝・副使徐葆光)を歓待する為に首里城にて初めて演じられたもので、それゆえ組踊は首里の王族を中心とした上級士族の芸能として伝えられていたもので、その後徐々に地方に伝播し、琉球王国の崩壊で一気に花開き、一般市民の中に拡がっていったもので、従ってその台本も全て写本としてしか伝わっていなかった。
 松山傳十郎はその中でも人気のあった「久志の若按司」を活字化し、『琉球浄瑠璃』として刊行したのである。
 復刻にあたっては原本をそのまま影印で復元すると共に、今の人には読みにくいので文字の読解の参考を「しおり」として添付すると共に、国立劇場おきなわの調査養成課課長茂木仁史氏の詳細な解説を附した。




B6判、並製、132頁 限定三〇〇部
定価1,650円(本体1,500円+税)
  

Posted by 沖縄本といえば榕樹書林 at 20:31Comments(0)芸能

2023年03月01日

只今発売中!! 琉球弧叢書№37 『首里城の舞台と踊衣裳』



 茂木仁史・古波蔵ひろみ著/国立劇場おきなわ監修

 本書は「御城舞台の研究」と「踊衣裳と結髪の研究」という二つの論文を収録している。いずれも、琉球国時代の組踊や琉球舞踊の姿を明らかにしようとする試みである。
 「御城舞台」とは、琉球国王一世一代の「冊封」に際して首里城の御庭に作られた特設舞台のことである。一七一九年に初めて記録上に現われ、最後の琉球王・尚泰の冊封が行われた一八六六年まで、わずか五回しか姿を見せなかった幻の舞台である。その一五〇年ほどの間にも、芸能の変化に合わせて御城舞台も姿を変えるが、舞台と楽屋を橋掛りでつなぐという能舞台にも似た特殊な形は堅守された。この基本構造は琉球国の芸能の本質と通じ、変化した部分は琉球芸能の現在につながっている。
 琉球芸能の「踊衣裳」といえば紅型衣裳に代表されるが、琉球国時代には異なる伝承があった。若衆の凛とした佇まいと色気を際立たせる「板締縮緬若衆衣裳」と、大人の女性の優美な気品を示す「琉縫薄衣裳」である。しかし、当時の衣裳はほとんど伝世されず、技術も廃れたことから幻の衣裳となっていた。本書ではこれまでの研究も踏まえつつ、琉球国の踊衣裳を具体的に示すよう目指したものである。また、結髪や髪飾りなどは近現代に変化したものもあるため、衣裳と一体になって装いを構成するものとして研究対象とした。
 琉球国時代の芸能の実態については、明らかにされていないことも多い。今後の研究や公演に本書が寄与することを願うものである。(茂木仁史)

   A5判、上製、296頁
   定価(本体3,600円+税)

〈目次〉

Ⅰ 御城舞台の研究

  はじめに
  序章 芸能と舞台

第一部「御城舞台」の図像研究
第一章 一七一九年の御城舞台
第二章 一八三八年の御城舞台
第三章 一八六六年の御城舞台

第二部「御城舞台」の諸相
第四章 一八三八年の稽古と稽古場
第五章 躍が上演された場所
第六章 御膳進上と諸行事
第七章 舞台飾りと道具
第八章 観客と観客席
第九章 御城舞台の形状と寸法

おわりに

Ⅱ 踊衣裳と結髪の研究
  
はじめに
第一部踊衣裳の研究
第一章老人踊
第二章若衆踊
第三章女踊

第二部結髪の研究
第四章欹髻―老人・成人男子の髪型
第五章丸結の研究
第六章垂髪とかつら髪
  
  おわりに

*著者紹介*

茂木仁史
 沖縄県立芸術大学大学院芸術文化学研究科(博士後期課程)修了、芸術学博士
 国立劇場おきなわ調査養成課課長
 沖縄県立芸術大学芸術文化研究所 共同研究員

古波蔵ひろみ
 琉球大学大学院人文社会科学研究科(博士後期課程)修了、学術博士
 沖縄県立芸術大学芸術文化研究所共同研究員  

Posted by 沖縄本といえば榕樹書林 at 18:36Comments(0)琉球弧叢書