2016年09月20日

本日発売!! 芭蕉布物語

本日発売!! 芭蕉布物語

 柳 宗悦著 
 松井 健(東京大学名誉教授)解題
 柳宗悦とその同人一行は、昭和13年から15年にかけて4回にわたって来琉し、琉球における民藝の美を求めて各地を踏査した。その成果は幾つもの書籍として発表され、琉球の文化や伝統工藝を広く世に知らしめることとなった。『琉球の陶器』『琉球の文化』『琉球の織物』『琉球の型附』などである。『芭蕉布物語』もその中の一冊で、昭和17年に私家版、限定225部として刊行された、B5変型の漆染め和紙装の美しい本である。本書の奥附にはこう記されている。

 猥(みだり)に復刻すべきに非ず。

 こういうこともあって本書は全集等は別として復刻・再版されることもなく今日に至っている。
 しかし、『芭蕉布物語』が沖縄の戦後の伝統工芸、とりわけ芭蕉布の復興に果した役割は極めて大きいものがある。
 1974年に人間国宝に指定された喜如嘉の芭蕉布の平良敏子さんは、『芭蕉布物語』を読むことによって故郷の織物の美を再認識し、復興への決意を固めたという。戦後の荒廃の中での苦闘を支えたのは、柳宗悦による芭蕉布への賛歌だったのである。
 本書の復刻・再版にあたっては原著のイメージを出来るだけ損なうことのないよう、印刷から紙、表紙に至るまで細かな配慮をした。
 解題は、この間、柳宗悦と民藝運動に関して、積極的に論を展開している松井健(東京大学名誉教授)先生にお願いし、ほぼ本文と同分量の濃密なものとなった。
 老齢化や過疎化、文化意識の変化等で伝統工藝はどこでも大きな危機にある。本書はその様な危機を乗り越えていくことへのエールとなろう。
 芭蕉布の美しさを再認識し、いつまでも残していく為に・・・。

〈目次〉

前書(まえがき)/芭蕉布(ばしょうふ)/芭蕉糸(ばしょういと)/糸績(いとうみ)/
糸括(いとくくり)/糸染(いとぞめ)/桛巻(かせまき)/絣柄(かすりがら)/
機織(はたおり)/絣味(かすりあじ)/芭蕉着(ばしょうぎ)/夏衣(なつぎぬ)/
織手(おりて)/後書(あとがき)
 
〈目次〉 芭蕉布物語 解題

一、『芭蕉布物語』の位置
二、『芭蕉布物語』が語ること
三、近代批判としての『芭蕉布物語』
四、『芭蕉布物語』爾後


   並製本、B5変、120頁、グラビア8頁
   定価(本体1,500円+税)

   ※現在、特装本も製作中です。(2016年10月末刊行予定)
   『芭蕉布物語』 特装本 
   限定45部、古芭蕉布装、芭蕉布裂4点、貼込、函入
   価格は、未定(2016年9月現在)

*著者紹介*

柳 宗悦(やなぎ むねよし)
1889年東京に生まれる。
東京帝国大学文学部卒。日本民藝運動の理論家にして、
その組織者であり、その業績は巨大である。
膨大な著書は筑摩書房から『柳宗悦全集』として刊行され、
なかんずく第15巻『沖縄の伝統』には琉球沖縄に関する全論稿が収録されている。
昭和13年(1938)から15年にかけ4回にわたって訪琉し、陶芸・染織・漆芸等の
本土への紹介に尽力すると共に、方言論争等を通して琉球文化の素晴らしさと
その保存の重要性を訴えた。
1961年没。

松井 健(まつい たけし)
1949年、大阪市生まれ。
京都大学理学博士。京都大学、神戸学院大学を経て東京大学東洋文化研究所教授。
2015年より東京大学名誉教授、人類学専攻。総合地球環境学研究所客員教授。
1972年より沖縄調査を始め、アフガニスタン・パキスタンでの遊牧民調査、
東南アジアでの工芸調査なども行う。
人類学についての多数の著作の他、柳宗悦と民藝について、
『柳宗悦と民藝の現在』(吉川弘文館、2015年)、『民藝の擁護 基点としての〈柳宗悦〉』
(里文出版、2014年)、『金城次郎とヤチムン』(榕樹書林、2016年)がある。


同じカテゴリー(美術・芸術・工芸)の記事

Posted by 沖縄本といえば榕樹書林 at 18:22│Comments(0)美術・芸術・工芸
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。