前田静秋詩集 『悲歌/幻像』

沖縄本といえば榕樹書林

2013年11月15日 13:39



 前田静秋著
 著者前田静秋氏は詩集『のくちゅるぬ』や『亡却の川』で知られた詩人で、その詩集はすべてオリジナル銅版画を挿画としたり、皮装であったり、あるいは又宝石を表紙に埋め込んだりといった豪華限定本であったことで知られ、斎藤昌三の『書物の美』や雑誌『銀河』創刊号でも取り上げられている。
 さて、著者は1989年来、沖縄宜野湾の普天間基地そばのいわゆるアメリカ住宅に移り住み、2011年に病死した。著者は生前より新しい詩集の刊行に向けて推稿を重ねていたが、その死後、遺族によって刊行されたのが本書である。
 日本大学芸術学部を終戦の年に卒業したという著者の多数の挿画が刺激的だが、実はこの詩集の独創性は別にある。この詩集は短歌を詩という形に仕立てたものだということだ。ボードレールに傾倒していた著者の耽美的な詩と短歌の隔合と言っていいだろう。限定番号付だが一般市販用はNo.40からNo.100までの分である。
 著者が生前作製した短歌が印刷されたハガキに自筆サイン・落款(らっかん)入りのカードが添付されている。(No.85以降はその複製版)

   A5、布製、函付、198頁
   定価(本体9,000円+税)

   

関連記事